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経済に関する話題なんでも。ニュースの分析・批評・解説など。大胆な予想や提言も。ご意見、ご批判は大歓迎です。
経済なんでも研究会
今週のポイント
2023-10-02-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 4つのカベに囲まれたNY株式市場 = ダウ平均は先週456ドルの値下がり。終り値は3万3500ドルに低下した。ねじれ議会で新年度予算が成立せず、10月1日以降、政府機関の一部が閉鎖されることが確実に。国債の評価が下がって長期金利が上昇、株価は下落した。予算の不成立が長引くと、景気も足を引っ張られる。ニューヨーク市場の前面には、突如として分厚いカベが出現した。(土壇場で45日分の暫定予算が成立したが、不安定な状況は変わらない)。

それだけではない。よく見ると、市場を取り巻くカベは、あと3つ。まず1バレル=90ドル台に達した原油価格の再上昇。次に多発するストライキ。UAW(全米自動車労組)に注目が集まっているが、いまアメリカでは300もの企業でストが行われている。これで賃金が上がれば、物価を押し上げかねない。予算・原油・ストライキの共通点は、FRBの金融政策では解決できないことだ。そして4つ目のカベは、そのFRBが進める金融引き締め。市場はこの4つのカベに囲まれてしまった。

日経平均は先週845円の値下がり。終り値は3万2000円を割り込んだ。これで9月は761円の下げ、3年半ぶりに3か月連続の下落となっている。相変わらず押し目買いが強くストンとは下がらないが、ニューヨークの調子が冴えないためジワジワと値を下げた。円安の進行で輸出関連株は買われても、物価高で悪影響を蒙る銘柄は下げている。岸田首相が打ち出した新経済対策も、上げ材料にはならなかった。日米ともに、重たい環境のなかで10月を迎える。

今週は2日に、9月の日銀短観、新車販売。6日に、8月の家計調査、毎月勤労統計、景気動向指数。アメリカでは2日に、9月のISM製造業景況指数。4日に、ISM非製造業景況指数。5日に、8月の貿易統計。6日に、9月の雇用統計が発表される。

        ≪2日の日経平均は? 予想 = 上げ


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  ☆ 日経平均予想は過去17年間2946勝1236敗。勝率は7割4厘でした。やっと大きなカベになっていた7割を確実に上回るようになりました。

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ウクライナ支援予算を削除 : アメリカ議会
2023-10-03-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 土壇場で‟つなぎ予算”は成立したが = アメリカの上下両院は30日夜、48日分の暫定予算を可決した。これにより政府による支払い不能や一部政府機関の閉鎖は、土壇場で回避された。バイデン大統領も「不必要な危機を免れることが出来た」と評価。ウオール街も一息ついた形。しかし、この暫定予算ではウクライナ支援のための予算がすべて削除された。その影響は、想像以上に大きいかもしれない。

アメリカの議会は、いわゆる‟ねじれ議会”。上院は与党の民主党だが、下院は野党の共和党が過半数を占める。このため10月1日から始まる新年度の予算審議が難航。成立が危ぶまれたことから、与野党は暫定予算を編成することで合意していた。ところが下院の超保守派といわれる21人の議員が造反。この予算にも反対したため、政府資金の枯渇が心配されていた。

共和党のマッカーシー下院議長はぎりぎりの30日夜、新しい妥協案を提示。超保守派も合意して、暫定予算が成立した。しかし超保守派を納得させるため、この妥協案にはウクライナ支援のための予算が全く含まれていない。バイデン政権はこれまで439億ドル(6兆5000億円)の資金を予算に計上、この10-12月にも240億ドルを要求していた。

専門家によると、当面は使い残しの予算もあることから、大きな支障は出ないという。しかし11月17日になれば、再び同じことが起こるだろう。今回の造反で味を占めた超保守派は、同じ行動を繰り返すに違いない。また本予算の内容についても、影響が及ぶ公算は大きい。その後ろには、トランプ前大統領の影も見え隠れする。ウクライナ戦争や世界秩序の行く方をも左右する、大きな問題に発展するかもしれない。

        ≪2日の日経平均 = 下げ -97.74円≫

        ≪3日の日経平均は? 予想 = 下げ


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物価高が支えた景気 : 日銀短観
2023-10-04-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 大企業・非製造業は32年ぶりの高さ = 日銀は2日、9月の企業短期経済観測調査の結果を発表した。それによると、大企業・製造業の業況判断指数はプラス9で、前回6月調査の数字を4ポイント上回った。また大企業・非製造業はプラス27、こちらも前回を4ポイント上回り、なんと32年ぶりの高さに。自動車の部品供給が正常化し、コロナ規制の解除などが貢献した。ただ中小企業・製造業はマイナス5で前回と変わらず、いぜん水面上に頭を出せない。

この調査は全国9000社あまりの企業を対象に、日銀が3か月ごとに実施している。前回より景況感が「よくなった」と回答した企業の割合から「悪くなった」と回答した企業の割合を差し引いた数字が判断指数。業種別にみると、自動車、食料品、石炭・石油、木材・木製品、電気・ガス、宿泊・飲食サービス、小売りが大幅に改善している。

調査では、3か月後の見通しについても聞いている。その結果は、大企業・製造業がプラス10で今回より1ポイント改善する見込み。大企業・非製造業はプラス21で、6ポイント悪化する見通し。経常利益も23年度は、全規模・全産業で2.7%の減益となる。アメリカ・中国・EUの景気停滞、エネルギーや人件費の高騰が、懸念材料となっているようだ。

こうした調査から読み取れるもう1つの要因は、モノやサービスの値上がりだろう。たとえば判断指数が大幅に改善した業種をみると、自動車を除けば食料品から小売りまで、みな値上げによって売り上げを大きく伸ばしたはずだ。ある意味では、値上げが企業の景況感を底上げしたとも言えるだろう。その値上げラッシュも、そろそろ一段落する。その見通しが、企業の先行き見通しを慎重にさせているのではないか。

        ≪3日の日経平均 = 下げ -521.94円≫

        ≪4日の日経平均は? 予想 = 下げ


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大変だ! 人手不足① トラック業界
2023-10-05-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 来年は輸送能力が4億トンも減る = 「人手が足りなーい!」という悲鳴が、多くの業界から聞こえてくる。人手不足は、日本経済が直面する最大の問題となりそうだ。大学や高校を卒業する若者たちは引っ張りダコ。有効求人倍率は1.3倍前後に張り付いている。その根底にあるのは、少子高齢化による労働人口の減少。それがコロナ禍で加速された。そのうえ来年4月からは、残業時間が法的に規制される。

働き方改革関連法に基づき、来年4月からは各業界の残業労働に対して上限が設定される。1年間の残業時間は原則360時間までだが、たとえば建設業は720時間、自動車運転業は960時間、医師は960時間まで認められた。しかし現状の残業時間はもっと長い。したがって残業が短くなるだけ、仕事量は減る。それを埋めるための人手が必要になるわけだ。これが。いわゆる‟2004年問題”である。最初に主な業界の実情をみてみよう。

まずはトラック業界。残業規制の影響で、来年の輸送能力は19年比で14.2%、4億トン分の減少となる。現在トラック運転手は84万人前後いるが、28年には28万人、30年には35%減少するという試算も。その原因は、第一に人手が集まらないこと。労働条件が厳しく、賃金も安いからだ。厚労省によると、大型トラック運転手の月当たり労働時間は平均212時間。賃金は年463万円で、全産業平均を26万円下回る。だから若者や女性が入ってこない。

その一方、仕事量は急増している。特にネット通販の拡大で、宅配の需要が増えた。20年度の宅配取扱量は47億8000万個、前年より5億個も増加している。だから1人当たりの扱い量が増えて、残業時間も増えざるをえない。ところが、そこへ残業規制。業界や各企業も対策を講じているが、‟2024年問題”の解決はきわめて難しい。

                    (続きは明日)

        ≪4日の日経平均 = 下げ -711.06円≫

        ≪5日の日経平均は? 予想 = 上げ

 
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大変だ! 人手不足② トラック業界
2023-10-06-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 中継輸送は名案、スピードアップは愚策 = 多くの企業が、トラック運転手不足への対策を始めた。まずは協業。これまで競争関係にあった同業者が、1台のトラックに両社の製品を乗せて運ぶ。また異業種間での協業も、すでにいくつかが実現している。さらに同業他社に、荷物の一部を委託するケースも現れた。要するに厳しい人手不足という現実を前にして、トラック業界は競争よりも協調を選び始めた。

こうしたなかで業界が編み出した中継輸送方式は、なかなかの名案だ。たとえば東京から大阪へ向けて、運転手Aがトラックを走らせる。一方、大阪からはBが東京へ荷物を運ぶ。この両者を中間の静岡県で交代させるのが中継方式。AはBが運転してきたトラック、BはAが運転してきたトラックに乗って東京、大阪に帰る。これまでとは違って、AもBもその日のうちに自宅へ戻れる。労働条件が大幅に改善されるわけだ。

政府もこの方式を評価し、全国に数か所の中継基地を作る方針。だが政府が検討している対策のなかに、大型トラックの高速道路におけるスピード制限を緩和する案がある。現在80キロに制限している最高速度を100キロに引き上げ、それだけ輸送力を増強しようというわけだ。だが、これは安全性を度外視する全くの愚策。止めた方がいい。

トラックの代わりに、鉄道の利用を増やす傾向もみえている。新幹線で生鮮食品を運ぶ実験も始まった。しかし、これらの対策をすべて実行しても、トラック業界の人手不足が解消することはないだろう。その結果は、運賃の値上げと過剰サービスの廃止に向かう。たとえば宅配便の配達日指定などは、有料になるか廃止される可能性が強い。

                     (続きは明日)

        ≪5日の日経平均 = 上げ +548.48円≫

        ≪6日の日経平均は? 予想 = 下げ


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大変だ! 人手不足③ バス・タクシー業界
2023-10-07-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ バスもタクシーもどんどん減る = 日本バス協会によると、全国のバス運転手はいま約11万6000人。この10年間で1万3000人以上も減少した。来年4月からの残業規制で8000人分が不足する。さらに30年度には9万3000人まで減って、3万6000人が不足する見通しだという。このため路線バスの廃止や減便、あるいは値上げなどが相次いでいるのが現状。トラック業界との運転手の奪い合いも激しくなっている。

国土交通省の統計によると、全国の路線バスは10年度―21年度の間に総計1万5332キロも縮小した。また値上げは21年度には1件だったものが、ことしは1-6月間で20件に達している。やはり労働条件が悪く、若い人や女性が入ってこない。厚労省によると、22年の年間収入は平均399万円、全産業平均を98万円も下回っている。バス会社によっては、外国人の採用を検討しているところもあるという。

タクシー会社も、運転手不足に悩まされている。業界団体によると、21年度の法人タクシー運転手は22万人。10年度比で12万人減少した。コロナの流行で、高齢者が一斉に退職したことが響いている。自民党内では菅元首相が中心となって、ライドシェア制度の実現を目指しているそうだ。ライドシェアと言えばカッコいいが、要は白タクの容認。タクシー不足は、そこまで来ているということだろう。

トラックの不足は、物流に大きな支障をもたらす。一方、バスやタクシーの不足は、国民の生活を脅かす。特に過疎地域に住む高齢者は、買い物や病院への行き来が困難になってしまう。地方自治体もいろいろ対策を考えているようだが、状況は改善しない。こうした交通関係の運転手不足は、政治的にも大問題になることは必至。岸田首相は、このことに気付いているのだろうか。

                  (続きは来週の予定)

        ≪6日の日経平均 = 下げ -80.69円≫

        【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     


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今週のポイント
2023-10-09-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 空気が入れ替わったニューヨーク市場 = ダウ平均は先週100ドルの値下がり。終り値は6月1日以来の安値となった。3週連続の下落で、この間の下げ幅は1200ドルを超えている。求人数など雇用関連の数字が強く、FRBの金融引き締めは長引くという観測が強まった。そこへマッカーシー下院議長の解任劇。国債の格下げ警戒から長期金利が上昇、株価はどうしても上を向けなかった。

日経平均は先週863円の値下がり。3週連続の下落で、この間の下げ幅は2800円を超えた。ニューヨークの軟調に引きずられた形だが、年初来22%も上昇したことの反動が出て下げ幅を拡大した。相変わらず押し目は活発、しかし全体の株価を押し上げるほどの力はない。円相場は150円まで下落したところで、介入に対する警戒感が強まり自律的にやや上昇。一方、長期金利は一時10年ぶりに0.8%台に乗せている。

ニューヨーク市場の冷え込みは、まだ続きそう。FRBが11月1日の政策決定会合で、0.25%の利上げを決めることはほぼ確実。下院でのゴタゴタは続き、11月17日には再び政府予算が底をつく。夏の空気が秋というよりは、いっぺんに冬の空気に入れ替わったようにも感じられる。そうしたなかで、株価は反発力を試されることになるだろう。また日米間の金利差はさらに拡大、円相場には下落の圧力が加わる。それでも日銀は動かないのだろうか。

今週は10日に、9月の景気ウオッチャー調査。12日に、9月の企業物価、8月の機械受注。アメリカでは11日に、9月の生産者物価。12日に、9月の消費者物価。13日に、10月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が13日に、9月の消費者物価と生産者物価、貿易統計を発表する。

        ≪10日の日経平均は? 予想 = 上げ


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「減税⇒選挙⇒増税」は 困ります!
2023-10-11-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 減税論が飛び交う永田町 = コトの発端は9月26日の閣議。岸田首相は新経済対策の作成を指示したが、この席で「税や社会負担の軽減など、あらゆる手法を動員する」「成長の成果である税収増を国民に適切に還元すべきだ」と強調した。所得税か法人税か消費税か? 永田町ではその日から、減税論が飛び交っている。自民・公明党が減税に傾いたため、野党はお株を盗られた形で意気消沈することとなった。

岸田首相はしばしば「賃上げや半導体などの戦略投資を後押しするための企業減税」が必要だと述べている。したがって、この種の減税が実施されることは、まず確実。さらに一般国民に対しても「成果を還元する」と明言しているので、所得減税も実施されそうだ。ただ消費税は混乱が起きる可能性があり、減税は難しそう。結局は所得税と租税特別措置法による法人減税が行われる公算が強い。

ただ、その規模はまだ不明。22年度は税の自然増収が約6兆円。これにコロナ予備費の使い残しなどを加えると、10兆円あまりの財源は確保できる。しかし減税規模は、もっと大きくなるに違いない。そのうえガソリン・電気・ガス代の補助、少子化対策、防衛費の大幅増、脱炭素政策費など、兆円単位の支出がずらりと並ぶ。いったい、どこからおカネが出てくるのだろう。

いま自民・公明の与党議員が減税議論に夢中なのも、これが選挙戦での票集めに抜群の効果を発揮するからだ。だから減税は多岐にわたり、額は多ければ多いほどよい。しかし選挙の前の大判振る舞いが、選挙後には増税となって返って来る可能性は決して小さくない。財源を明示しない減税論は、要注意なのである。

        ≪10日の日経平均 = 上げ +751.86円≫

        ≪11日の日経平均は? 予想 = 下げ

   
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大変だ! 人手不足④ 建設業界
2023-10-12-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 大阪万博は象徴的な出来事 = 建設業界の人手不足も深刻だ。総務省によると、建設業の従業員数は22年で479万人。ピークだった97年に比べると、3割以上も減少した。人手が足りないと、工期が遅れる。人手を増やせば、人件費が増える。どっちにしてもコストは上がってしまう。そこへ来年4月からは、残業時間が年720時間に制限される。いま大阪万博の建築契約が進まず問題となっているが、この傾向は全国に広がり始めている。

昔は3K(きつい、汚い、危険)と言って嫌われた建設業。その労働環境は、ずいぶんと改善された。しかし労働条件はまだ悪い。総務省によると、22年の年間労働時間は平均1886時間。全産業の平均より268時間も長かった。しかも年間の賃金は、全産業の平均より55万円少ない。だから若い人が、なかなか入ってこない。そのうえ高齢化ガ進み、55歳以上の従業員が35%以上を占めている。

業界は懸命に対策を講じている。まずは重機械の投入による省力化。従業員に対しては「4週8休」、つまり週休2日の徹底を呼び掛けている。しかし現状は、公共工事でさえ3割程度しか週休2日を達成していない。さらに人手不足が深刻になるにつれて、労働時間が逆に長引く傾向さえみられる。この業界は下請けの重層構造、下へ行くほど労働条件の改善は進みにくくなっているようだ。

資材と人件費の上昇で、建設コストはうなぎ登り。これが大阪万博の建築契約を困難にしているが、一般のマンションや一戸建て住宅の建設費も急騰してきた。たとえば東京都の住宅建設費をみると、この5-7月は前年比5%の増加となっている。ゼネコンは受注を絞ったり、資材の共同管理などコストの引き下げに努力しているが、大きな効果はない。来年4月からの残業規制で、建設業界の人手不足がさらに進むことは避けられない。

                        (続きは明日)

        ≪11日の日経平均 = 上げ +189.98円≫

        ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ

  
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大変だ! 人手不足⑤ 介護職員
2023-10-13-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 要介護者の増加に追い付かない = 介護保険制度は2000年に発足した。当時の介護職員は55万人。それが現在は230万人に増えている。常に不足気味だが、なんとか伸びてきた。ところが、これからが大変。25年には団塊の世代が、全員75歳以上に達する。このため厚労省によると、介護職員は32万人も不足する。これが介護の「2025年問題」だ。さらに40年には69万人が不足する見通しだが、それが埋まる見込みはほとんどない。

労働条件は、決していいとは言えない。力仕事も多く、精神的にも気を使う。労働時間も長くなりがちだ。そのうえ22年の平均賃金は月額29万3000円で、全産業の平均より6万円少ない。賃金の原資は国や自治体の支出もあるが、大半は40歳以上の人が収める保険料とサービスの利用者が支払う料金。この両方ともかなり高い水準にまで引き上げられているので、政治的にも大幅な増額は困難な情勢だ。

介護職員の不足は、直ちにサービスの低下につながる。訪問看護やデイサービスの回数が減ったり、利用者一人ひとりに対する気配りも粗くなりやすい。対応策としては介助ロボットの導入、外国人の招聘など。しかし外国人は国家試験のカベが高く、なかなか増えてこない。また日本の賃金水準が低く、円安の問題もあって、最近では希望者が減少し始めた。

22年度の有効求人倍率は3.79倍ときわめて高く、求人難が続いている。政府は①離職した介護人材の呼び戻し②新規参入の促進③離職阻止・定着促進--を掲げ、たとえば再就職者に20万円を給付、2年勤めたら返済免除などの措置も講じている。しかし結局は賃金の問題に帰着する。来年は3年に1度の介護報酬改定が実施されるが、大幅な賃上げがないと見通しはますます悪化するだろう。

                             (続きは明日)

        ≪12日の日経平均 = 上げ +558.15円≫

        ≪13日の日経平均は? 予想 = 下げ
  

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大変だ! 人手不足⑥ サービス業
2023-10-14-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 倒産に直結してしまう業種 = サービス業は基本的に、人手がなければ成り立たない業種だ。だから人手不足は命取り。倒産してしまう企業も多い。なかでも人手不足に苦しんでいるのは、飲食業と宿泊業。コロナ規制で離れて行った従業員が帰ってこない。高齢化が進む一方で、新規参入が少ない。この業種は季節や時間で繁忙期が異なるから、バイトやパートなどの非正規従業員は必要不可欠。その人たちも集まりにくくなっている。

総務省のデータによると、全国の飲食店は22年時点で約67万店。働く人は約437万人で、全体の約7%を占めていた。店舗数はピークだった1991年に比べると、14%も減っている。しかし従業員数はやや増加した。これは少人数で経営する店舗が淘汰され、大人数の店舗が増えた結果だと思われる。帝国データバンクの調査によると、22年時点で「非正規社員の不足」を訴える店舗は全体の71.3%に達し、全業種のなかで最高だった。

宿泊業の規模は22年時点で、ホテルと旅館を合わせて約5万施設。従業員は約68万人、このうち非正規職員が54%、女性が66%を占めている。コロナ不況で離職した人が、まだ戻り切っていない。労働時間が長く低賃金のため、もともと離職率が高い業界だ。ホテルと旅館が、人手を奪い合っている状況。帝国データバンクの調査で「非正規社員の不足」を訴える施設は75.0%で、全業種中2位となっている。

小売り業は、デパート・スーパー・コンビニから専門店・個人商店まで幅広いが、どこでも人手が足りない。経産省の経済センサスによると、全国で約88万店舗、従業員は約754万人にのぼる。しかし長時間労働と低賃金で、離職率は高い。各種の調査によると、離職の理由は圧倒的に「賃金、賞与が少ないこと」だ。したがって待遇改善が最も必要だが、人口が減少して行くなかで市場は伸びにくい。競争も激化する一方なので、対応を怠ると倒産という滝つぼに引き寄せられる。

                      (続きは来週の予定)

        ≪13日の日経平均 = 下げ -178.67円≫

        【今週の日経平均予想 = 3勝1敗】     

 
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今週のポイント
2023-10-16-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 東京市場ははしゃぎ過ぎ? = ダウ平均は先週263ドルの値上がり。4週間ぶりの上昇となった。雇用や物価が予想より強く、イスラエルの緊迫も加わって金利が上昇。環境は芳しくなかったが、FRBが発表した9月のFOMC議事録で「利上げに慎重な意見が多かったこと」が判明。市場はこれを頼りに買い進んだ。その根底には、過去3週間で1200ドル下げたことへの反動がある。押し目買いの力は、まだまだ強い。

日経平均は先週1321円の大幅な値上がり。終り値は3万2000円を回復した。こちらも4週間ぶりの上昇で、上げ幅は6月中旬以来の大きさだった。堅調なニューヨーク市場に追随したが、イスラエル情勢など悪材料は多い。やはり過去3週間で2000円以上も下げたことへの反動だろう。それにしても上げ方が急すぎるから、こんどは反動で下げる。

イスラエルのガザ進攻が、どういう結果をもたらすのか。短期決戦で終わるのか。もし長引けば、原油価格が上がる。するとアメリカのインフレ収束が遅れ、FRBの高金利政策が長続きする。日本はエネルギー価格がさらに高騰、円相場も下落する。それがどの程度にまで発展するのか、いまは誰にも判らない。ただ株式市場の関心が、この問題に集中して行くことは確かだろう。

今週は17日に、8月の第3次産業活動指数。18日に、9月の訪日外国人客数。19日に、9月の貿易統計。20日に、9月の消費者物価。アメリカでは17日に、9月の小売り売上高、工業生産、10月のNAHB住宅市場指数。18日に、9月の住宅着工戸数。19日に、9月の中古住宅販売。また中国が18日に、7-9月期のGDP速報、9月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。

        ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ

  
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「ガザ地上戦」を 観る目 : 株式市場
2023-10-17-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ ユダヤ的な視点が強いNY市場 = イスラエル地上部隊のガザ進攻は、どんな結果をもたらすのだろうか。一般的な見方は、3つの可能性に集約できるだろう。①イスラエル軍は短期決戦に成功。1か月以内にハマスを完全排除する②ハマスがゲリラ戦で抵抗、レバノンのイスラム教シーア派ヒズボラが参戦して長期化する③イラクやイランが参戦、第5次中東戦争になる--このうち①の可能性が大きく、②もありうる。③は可能性が小さい。というのが常識的な見方と言えるだろう。

株式市場はこうした予測を基に、世界経済に対する影響や株価の動向までを予想する。とにかくウクライナ戦争に加えて、中東でも動乱が発生。将来への不安要因が増大したことは、好ましいことではない。また、たとえば原油価格のさらなる高騰も警戒を要する。①の短期決着ならば悪影響は小さいかもしれないが、②や③の状態に陥れば影響は計り知れない。

原油価格のさらなる高騰は、各国のインフレを助長する。アメリカでも落ち着き始めた物価が、再上昇するかもしれない。するとFRBは金融引き締め政策を、来年まで続けることになるだろう。景気は落ち込み、インフレと不況が共存するスタグフレーションの心配も出てくる。もちろん、株価は下げ基調に転じる。

いま世界の株式市場は、こんな状況まで想定して身構え始めているのだろう。ただしニューヨーク市場をよく観察すると、そんな気配はあまり見えない。イスラエルが地上戦を決定した先週も、ダウ平均は上げている。その理由は、ニューヨーク市場の大口投資家の多くがユダヤ系もしくは親ユダヤだからではないか。これらの投資家は①の短期決着しか眼中にない。したがって、ガザ地上戦が株価に及ぼす影響はほとんどないと確信しているように見受けられる。

          ≪16日の日経平均 = 下げ -656.96円≫、

          ≪17日の日経平均は? 予想 = 上げ


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大変だ! 人手不足⑦ 見通しは真っ暗
2023-10-18-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 35年には最大1190万人が不足 = これまで運輸・建設・介護・サービス業について人手不足の実情をみてきたが、他の多くの業種も人手が集まらずに苦しんでいる。たとえば医師・看護師、学校の先生や技師、消防士から官僚に至るまで。人が余っているのは、一部の事務系の職場と国会議員ぐらいなものではないか。しかも今後の見通しも、非常に厳しい。

三菱UFGコンサル&リサーチ社の推計。少子・高齢化の進行で、労働力人口は22年の6900万人が35年には6210万人に減少、就業者数も6700万人から6070万人に減る。人手不足は10年に30万人だったが、22年には130万人に増加した。その大きな原因は1人当たりの労働時間が減少したこと。この減少傾向が続くと、35年には最大1190万人が不足すると予測した。仮にそうなれば、日本経済がマイナス成長に陥ることは避けられないと結論している。

またパーソル総合研究所の推計。25年には505万人が不足。30年には7073万人の労働需要に対して、供給は6429万人にとどまる。したがって、人手不足は644万人に拡大するという予測。業種別では、サービス・医療福祉・卸小売り・製造・通信情報サービスの不足が大きいと分析した。これらの推計が当たるかどうかは判らないが、いずれにしても人手不足が容易ならぬ規模で発生することは示唆している。

過去の経験から考えると、仮に大きな不況がやってくれば人手不足は解消するかもしれない。だが人手不足が深刻になって、経済が下向きになる可能性もあるわけだ。その場合は賃金の上昇が原因となって、物価も押し上げられる。つまりインフレと不況が同時に起こるスタグフレーションを警戒しなければならない。どうして、こんなことになってしまったのか。

                       (続きは明日)

        ≪17日の日経平均 = 上げ +381.26円≫

        ≪18日の日経平均は? 予想 = 上げ

  
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大変だ! 人手不足⑧ 原因は労働時間の短縮
2023-10-19-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 「働き方改革」で働く時間が減少 = 「人口が減っているのだから、人手不足はやむをえない」と考える人が多い。だが、これは間違い。たしかに日本の人口は減り始めたが、働く人は増えている。つまり遊んでいる人が少なくなったわけだ。たとえば労働力調査で就業者数をみると、13年には平均6311万人だったのが直近の4-6月期には6747万人に増えている。実に430万人以上も増加した。

この10年間、日本のGDPはあまり大きくなっていない。それなのに就業者がかなり増えても、人手不足なのはなぜだろう。その原因は2つ考えられる。1つはバイトやパートなどの非正規社員が増えたこと。非正規社員はこの10年間で、1906万人から2090万人へ184万人も増加した。これらの人たちは週3日とか、1日4時間しか働かない人が少なくない。したがって全体の労働時間が短くなってしまう。

もっと大きな原因は、正社員の労働時間も減少していること。労働力調査によると、正規労働者の男性の年間就業時間は13ー22年の間に6.7%減った。これは大企業については19年4月、中小企業については20年4月から、年間の時間外労働が原則360時間以内に規制されたことが影響している。

ここで注目されるのは、若手の社員ほど労働時間が減っていること。22年の就業時間を13年と比べてみると、45-54歳が5.7%、35-44歳が7.9%なのに対して、25-34歳は8.6%。若い人ほど働く時間が減少した。これは若い社員ほど、有給休暇や育児休暇などを取得した結果だと考えれる。働き方が改善されたことは結構だが、それが人手不足の大きな原因となっていることも事実なのである。

                        (続きは明日)

        ≪18日の日経平均 = 上げ +1.96円≫

        ≪19日の日経平均は? 予想 = 下げ


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大変だ! 人手不足⑨ 国家の危機
2023-10-20-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 政府は鈍感すぎる = 機械化・ロボット化・AI化、女性と高齢者の活用、外国人の招聘、それに生産性の向上。--人手不足を解消するための方策は、これしかない。だから政府・自治体・企業・個人は、これらが進展するように地道な努力を重ねるしかない。たとえばロボット・AI化減税、リスキリング、年収のカベの撤廃、外国人労働者に対する優遇策、週休3日制の推進・・・。しかし、こうした努力を重ねたとしても、今後に予想される大量の人手不足を埋め切れるとはとても考えられない。

「同一労働同一賃金」の原則を徹底することも重要だ。いま非正規雇用というのはバイト・パート・派遣社員など、正規社員以外のすべてを指している。だが、このなかには希望して短時間労働をしている人と、正規社員と同じように働いている人が混在している。これをはっきり分けて、たとえば正規社員と同じように1年間働いたら、必ず正規社員に登用しなければならないようにする。人手不足が深刻になれば実現しやすいし、この措置で働きたい人も増えるだろう。

それでも人手不足の解消は、とてもムリ。人口減少の直接的な影響も、そろそろ出始める。労働需給のひっ迫が続けば、賃金は上がる。すでにことしの最低賃金は、多くの都道府県で国が提示した金額を上回っている。もっと賃金が上がらないと、優秀な外国人労働者も日本にはやってこない。したがって人件費の増加を原因とする物価騰貴は、覚悟しておく必要があるだろう。

大問題は、政府に危機感がないこと。先ごろ発表した「2024年問題対策」をみても、鉄道や船舶の輸送量を増やすほか、置き配にポイントを付ける程度。なんとも、お粗末だ。もっと広範な視点から将来を見通す姿勢が、まったく欠如している。人手不足の問題は一過性ではなく、国家の危機を招きかねない一大事なのに。

        ≪19日の日経平均 = 下げ -611.63円≫

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5%成長は 達成できるのか? / 中国
2023-10-21-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 現状判断では「きわめて微妙」 = 中国統計局の発表によると、7-9月期の実質成長率は前年同期比の年率で4.9%だった。前4-6月期の6.3%から大きく減速。不動産不況に改善の兆しが見られず、個人消費や輸出も伸び悩んだ。地方政府は財源難で景気対策を打ち出せず、北京政府はもっぱら金融緩和で需要を喚起しようとしている。だが今後の見通しは厳しく、習近平政権が目標としている「23年の5%成長」を達成できるかどうか。微妙なところだ。

統計局が同時に発表した主要指標をみると、1-9月の鉱工業生産は前年比4.0%の増加。1-6月の3.8%増を上回った。自動車や電機の生産が伸びている。また1-9月の小売り売上高は6.8%の増加、1-6月の8.2%増を下回った。一方、1-9月の固定資産投資額も3.1%の増加で、1-6月の3.8%増を下回っている。特に不動産開発投資は9.1%の減少、1-6月の7.0%減より悪化した。輸出も7-9月では10%の大幅な減少となっている。

こうした統計をみて、専門家の見方は割れている。「不動産不況が続いていて、回復の動きが鈍い」という見方と「予想以上にいい数字が出た」という評価。どの数字を重視するかによって、判断が分かれるようだ。そこから習近平政権が目標としている「23年の5%成長」も達成できるかどうか、その見通しも2分している。

個人消費と輸出が拡大するかどうか。その一方で、不動産不況がどのくらい改善するか。この3点が今後を予想するうえでのカギになる。まず消費は雇用情勢の好転がないと伸びにくい。それには時間がかかりそう。輸出は欧米の景気とアメリカの規制しだい。こちらも、やや望み薄。不動産不況の改善も、遅々として進まない。となると「5%成長」の達成は難しい? でも正確に言うと、目標は「5%前後」だから、4.7%でもOKなのかもしれない。

        ≪20日の日経平均 = 下げ -171.26円≫

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今週のポイント
2023-10-23-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 長期金利の上昇が波乱要因に = ダウ平均は先週543ドルの値下がり。週の前半は9月の雇用・消費者物価・小売り売上高がそろって予想を上回ったにもかかわらず、株価は上昇。ところが水曜日になると、長期金利が4.9%にまで上昇し株式市場には警戒感が走った。そこへパウエルFRB議長が講演で「さらなる引き締めが正当化されることもありうる」と言明、木曜日には金利が5%と16年ぶりの水準に到達した。イスラエル情勢なども悪材料になったが、先週は長期金利の上昇が最大の波乱要因となっっている。

日経平均は先週1057円の大幅な値下がり。週の前半は先々週に‟はしゃぎ過ぎた”ことの反動で下げ、後半はニューヨークに引きずられて下げた。長期金利もニューヨークの影響を受けて上昇、木曜日には日銀が国債の臨時買い付けに乗り出している。しかし金曜日には0.845%まで上昇した。市場では、日銀が1%までの上昇を容認するのではないかという推測も広まっている。

FRBは31-1日に政策決定会合を開くが、市場では「金利は据え置き」の見方が大勢。ただし「現在の高金利政策はずっと長続きするだろう」という推測も強まり、これが株価の頭を抑えている。一方、日銀は珍しくFRBより前の30-31日に会合を開く。そこで政策の修正を打ち出せるのかどうか。東京市場にとっては、中国の株価が年初来安値に落ち込んだことも気になる。

今週は26日に、9月の企業向けサービス価格。27日に、10月の東京都区部・消費者物価。アメリカでは25日に、9月の新築住宅販売。26日に、7-9月期のGDP速報、9月の中古住宅販売が発表される。なお23日には、岸田首相が臨時国会で所信表明演説。

        ≪23日の日経平均は? 予想 = 下げ


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‟先”が読めませんね! 岸田さん
2023-10-24-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 期限付き減税の危うさ = 岸田首相は20日、自民・公明党の幹部に対して「所得税の期限付き減税と低所得者への給付金支給」を検討するよう指示した。これを受けて政府・与党は、政策懇談会を26日に開いて議論を始める。税制改正法案を通常国会に提出、年度内の成立を図る方針だ。減税については与党内からも疑問の声が出ているが、岸田首相は所信表明演説でも明言。強行突破する姿勢を見せている。

減税の規模はまだ不明だが、5-10兆円程度。すべての納税者に一定の金額を還付する定額減税になるとみられる。期間は自民党の宮沢税調会長が述べたように、1年間となりそうだ。また所得税を納めていない低所得者に対しては、数万円の給付金を一律に配布する。所得税減税は実現すれば、小渕内閣が1999年に実施した定率減税以来のこと。ただ今回は、岸田首相がなぜ突然の形で持ち出したのか。疑問が続出している。

ふつう所得税減税は、景気の浮揚策として実施される。しかし今回は、物価高対策が目的。それなら年収が高い人にまで減税する必要があるのか。大半は貯蓄に回るだけだろう。インフレを助長する。国債の格下げにつながる。いや、選挙目当ての単なるバラマキだ。たしかに岸田首相は、衆院長崎4区と参院徳島・高知の補欠選挙の直前に、この減税政策を打ち出している。

たしかに減税は、選挙の票集めには有効かもしれない。年内にも可能性がある総選挙で「減税をします」と、叫びたいのかもしれない。しかし1年後のことを考えたら、どうなるか。来年秋には自民党総裁の任期が切れる。そのとき減税の期限切れが迫れば、それは増税になってしまう。いま仮に内閣の支持率が5%上がったとしても、1年後には10%下がりかねない。岸田さんは、そこまで‟先”を読んでいますか。

        ≪23日の日経平均 = 下げ -259.81円≫

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所信表明演説は 落第点!
2023-10-25-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 国民の知りたい点をすっぽかした = 「経済、経済、経済」と連呼した岸田首相の所信表明演説。経済を‟一丁目一番地”にしようという意欲は、よく伝わった。だが結論から言うと、残念ながら落第点を付けるしかない。というのも、その結果として日本経済はどんな姿になるのか。国民の生活は、どうなるのか。みんなが知りたいと考えている点に全く触れなかったからである。だから演説は空回り、岸田首相の独りよがりになってしまった。

経済の部分は、①供給力の強化②国民への還元--の2つに分かれる。このうち供給力の強化では「低物価・低賃金・低成長だったコストカット型経済を、持続的な賃上げや活発な投資がけん引する成長型経済に変革する」と表明。このため賃上げ減税や投資減税を行う。またAI、自動運転、宇宙などの技術開発を支援して行くと述べた。一方、国民への還元は減税とガソリン・電気・ガスへの補助金を継続することが中核となっている。

だが国民が本当に知りたいのは、その結果どうなるかということ。たとえば平均2%の実質成長率を持続できるようになるのか。常に賃上げ率が物価上昇率を上回るようになるのか。そして、かつて岸田首相が唱えていた所得倍増論は、消えてしまったのか・・・。こうした疑問に答えていないから、あの演説を聞いても日本経済の将来像は全く浮かんでこない。

さらに財源の問題。防衛費や少子化対策費には、巨額の財源が必要だ。しかし財源の話は先送りのまま。いま減税されても、1-2年後には大幅な増税が待ち構えているのではないか。国民は不安を感じているが、所信表明演説では何も触れなかった。こうした国民の将来に対する不安を払拭することこそが、経済の活性化に直結する。岸田首相の演説には、この観点が欠けていた。

        ≪24日の日経平均 = 上げ +62.80円≫

        ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ


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100ドルを超える恐怖 : 原油価格 (上)
2023-10-26-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ ガザ戦争で高まる危険性 = 原油の国際価格は、いま高止まりしている。ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)先物相場は、このところ1バレル=90ドルを前に足踏み状態。しかしイスラエルのガザ地上作戦が、本格的に始まったらどうなるか。ごく短期で決着すればともかく、もし長引いてレバノンやイランなどの近隣アラブ諸国が巻き込まれれば、価格は確実に100ドルを突破するに違いない。それが世界経済に及ぼす悪影響は、計り知れないほど大きくなりそうだ。

原油価格が100ドルを超えれば、各国の物価はさらに押し上げられる。アメリカやEUの中央銀行は、金融引き締めを継続せざるをえなくなる。その結果、景気は悪化するだろう。中国も燃料高で、景気の回復はさらに遅れる。日本も貿易赤字がいっそう拡大、企業収益も圧迫される。景気が下降する一方で物価は上昇、庶民の生活は苦しくなるばかり。政府が補助金を積み増せば、財政は破たんに近付く。

現在の原油価格は、実に複雑な要因が重なって形成されている。まず供給面では、OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどによる生産調整。さらにサウジアラビアとロシアは7月から、自主減産を追加。これを継続することで、相場を下支えしてきた。たとえば9月上旬に、プーチン大統領がサウジのムハンムド皇太子と電話会談しただけでも、価格は上昇した。その可能性は小さいが、仮にイランがホルムズ海峡を封鎖したら、価格は130ドルにも暴騰するだろう。

需要面の要因も複雑だ。アメリカの原油在庫が行楽シーズンのガソリン消費増加で減少すると、価格は上昇。中国の景気回復が遅れて需要が伸びないと、価格は下落。冬の暖房シーズンが近づくと、価格は上がる。現在はアメリカで高価格のためにガソリンの消費が伸び悩み、それが原油価格を抑える要因となっている。こうした需給両面からの力に加えて投機資金が暗躍するから、先行きの予想はかなり難しい。

                       (続きは明日)

        ≪25日の日経平均 = 上げ +207.57円≫

        ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ


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100ドルを超える恐怖 : 原油価格 (下)
2023-10-27-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日本はこの50年間なにをやったのか = ちょうど50年前の1973年10月6日、エジプトとシリアが共謀してイスラエルを奇襲。いわゆる第4次中東戦争が始まった。結果はイスラエルの勝利に終わったが、OPEC(石油輸出国機構)はイスラエル寄りの先進国を牽制するため、突如として原油の輸出価格を4倍に引き上げた。これが石油ショック。各国の物価は急騰、景気は下降を余儀なくされた。日本でもトイレット・ペーパーの買い占め騒ぎが起こり、当時の福田赳夫首相はこの現象を‟狂乱物価”と命名している。

この経験から、日本は実に多くのことを学び取った。原油の輸入先の分散、輸入先国との良好な関係維持、省エネの推進、エネルギー輸入依存度の引下げ、備蓄の増強など・・・。このうち省エネの推進や備蓄の増強、それに原油から天然ガスへの切り替えなどは、そこそこ進捗した。しかし中東への依存度は当時の80.7%から、最近は95.2%へと悪化している。

なかでも重要なのは、エネルギー輸入依存度の引き下げだ。総発電量に占める輸入化石燃料の比率をみると、1972年度は94.0%だった。それが22年度には72.4%まで下がっている。しかし50年間で、これしか下げられなかったと言うべきだろう。もし50%にまで下げていたら、現在の貿易赤字は大幅に縮小。物価もこんなには上がらなかったはず。

エネルギー輸入依存度の引き下げは、国内自給率の引き上げによって達成される。つまり日本はこの50年間に、もっと原発を安全に稼働させ、太陽光や風力など再生可能エネルギーによる発電量を増やしておくべきだった。これは歴代政府の失政だったと言えるだろう。産油国側は「減産による価格維持」を学んだが、日本政府は50年前の教訓を生かしきれなかった。

        ≪26日の日経平均 = 下げ -668.14円≫

        ≪27日の日経平均は? 予想 = 上げ

 
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‟危ない金融商品”の 季節
2023-10-28-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 高利回りにはリスクが伴う = アメリカの長期金利が16年ぶりの高さに上昇している。10年もの国債の利回りは先週5%台に乗せた。雇用や物価などが予想以上に堅調で、FRBの引き締め政策が長続きするという見方。政府の財政支出増加で、国債発行額が急増。そして議会が空転し予算成立のメドが立たないことが、長期金利を引き上げる原因となっている。最も信用度が高い国債でさえ、年5%の金利が付かないと売れない。その他の公共債や社債の利回りが、もっと高くなるのは当然だ。この高金利時代が、‟危ない金融商品”を生み出すことになる。

企業が売り出す社債の場合、その企業の経営状態が苦しいほど高い金利を付けないと売れない。なかには10%を超える金利の社債も発行される。こうした企業がデフォルト(債務不履行)や倒産する危険性は大きいから、その社債は代表的な‟危ない金融商品”と言えるだろう。こうした高金利の債券を集めて売り出した証券が、リーマン・ショックでは紙切れになった。

アメリカでは、大銀行が定期預金に高い利子を付けている。このため最近は、日本の銀行がドル建ての定期預金を高金利で売り出し始めた。たとえば三井住友銀行は年5.3%、SBI新生銀行は6%の商品を開発している。日本の定期預金なら、年0.01%の利子しか付かない。比較してみれば、きわめて魅力的。しかもデフォルトの危険は全くない。しかし1つだけ、落し穴がある。

それは為替相場。たとえば年7%の金利が付いていても、もし円相場が10%上昇すれば、損失の方が大きくなってしまう。7%の利息が受け取れるのは1年後、そのとき円相場がどうなっているかは神のみぞ知る世界。だから銀行はその危険性をよく説明してから売るはずだ。しかし経営不振の社債とは全く異なるが、これも一種の‟危ない商品”には違いない。

        ≪27日の日経平均 = 上げ +389.91円≫

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今週のポイント
2023-10-30-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ あさって1日のパウエル会見待ち = ダウ平均は先週710ドルの値下がり。2週間の続落で、この間の下げ幅は1200ドルを超えた。長期金利の上昇、中東情勢の緊迫、それに長引く自動車ストなど、株式市場には次々と逆風が吹き込む。7-9月期の実質GDP成長率が4.9%と予想をはるかに上回ったことも、金融引き締めを止められない原因になるという理由で悪材料視された。いまはあさって1日に行なわれる、パウエルFRB議長の記者会見を待つばかり。

日経平均は先週268円の値下がり。2週間の続落で、この間の下げ幅は1300円を超えた。アメリカに引きずられて、日本の長期金利も0.88%と10年3か月ぶりの高さに。それでも日米間の金利差はさらに広がり、円相場は150円台にまで下落した。臨時国会が開かれ、減税を含む政府の経済対策が議論のマトに。しかし市場は、ほとんど無視している。

FRBが31-1日の会議で「利上げせず、金利を据え置く」ことは、ほぼ確実。だが「引き締めは来年にかけても続く」という推測が大勢を占めている。このため金利が上昇、特にハイテク株が大きく値下がりした。この傾向はパウエル会見が終わっても、変わりそうにない。一方、日銀は30-31日に政策決定会合を開くが、多少の修正を打ち出せるかどうか。

今週は31日に、9月の労働力調査、鉱工業生産、商業動態統計、住宅着工戸数、10月の消費動向調査。1日に、10月の新車販売。アメリカでは31日に、10月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。1日に、10月のISM製造業景況指数。3日に、10月の雇用統計、ISM非製造業景況指数。またEUが31日に、7-9月期のGDP速報。中国が31日に、10月の製造業と非製造業のPMIを発表する。なお31日に、日銀総裁の記者会見。1日に、FRB議長の記者会見。

        ≪30日の日経平均は? 予想 = 下げ


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効かない 金融引き締め / アメリカ
2023-10-31-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 量的引き締めはまだ1兆ドル = パウエルFRB議長が「経済は金利の影響を受けにくくなっているのかもしれない」と嘆き節。珍しいことである。FRBは昨年3月からインフレ退治のために金融政策を引き締めに転換、政策金利をゼロから5.25%まで引き上げた。しかしアメリカ経済は堅調を維持し、物価はなかなか下がらない。パウエル議長の嘆きは、まだまだ続きそうである。

金利がこれだけ上昇すると、ふつう経済には強いブレーキがかかる。だが7-9月期のGDP速報は年率4.9%の成長、9月の小売り売上高は前月比0.7%の増加。ともに予想を大きく上回った。そして9月の消費者物価も前年比3.7%の上昇と、勢いが収まらない。もちろん高金利の影響で、住宅や自動車の販売は下向きに。また中小企業や低所得者の一部が、苦境に陥っていることも確かだ。

ところが多くの企業や個人は、低金利時代に借金をしてしまった。だから高金利時代がきても、あまり影響を受けないのではないか。また自己資金を貯め込み、借金に頼らない企業や個人も増えている。パウエル議長が「金利の影響を受けにくくなった」と述べたのは、こういう理由からだと考えられる。そこで、こんな状態がずっと続くのか。それとも時間が経てば、高金利の効果が出てくるのか。そこが大問題となってくる。

金利は上がったが、量的引き締めは進まない。FRBは昨年3月時点で8兆6000億ドルの現金を市場に放出していた。そこから国債や株式などを売り戻して資金を回収しているが、これまでの回収額は1兆ドル程度。だから資金はまだ市中に大量に残っている。このため引き締めの効果が出にくいという見方も有力だ。もっと大量に売り戻せば、国債や株式の価格が下がり過ぎてしまう。FRBはそれを警戒して量的引き締めを急がないとすれば、ある意味では自業自得と言えるだろう。

        ≪30日の日経平均 = 下げ -294.73円≫

        ≪31日の日経平均は? 予想 = 上げ


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