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経済に関する話題なんでも。ニュースの分析・批評・解説など。大胆な予想や提言も。ご意見、ご批判は大歓迎です。
経済なんでも研究会
非製造業が支える景気 : 日銀短観
2019-07-02-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 大企業・製造業の判断は2年9か月ぶりの低さ = 日銀は1日、6月の企業短期経済観測調査を発表した。それによると、大企業・製造業の業況判断指数はプラス7。前回3月調査より5ポイント悪化した。2期連続の悪化で、16年9月以来の低い水準に落ちている。生産用機械や金属製品、自動車の悪化がいちじるしい。16業種中9業種が悪化しており、中国経済の不調が製造業の業況低下に結びついた。

一方、大企業・非製造業の業況判断指数は、前回より2ポイント改善してプラス23となった。大型連休や外国人旅行者の増加が、サービス業を中心に需要を増やしたためとみられる。中小企業の動向をみても、製造業の判断指数はマイナス1で前回より7ポイント悪化したが、非製造業はプラス10で2ポイントの悪化にとどまっている。

このように全体の景気は、製造業の悪化を非製造業が下支えする形で推移した。たとえば18年度の純利益は、製造業が前年度比0.8%の減少。非製造業は0.5%の増加で、全産業では0.1%の減益にとどまった。なお土地を除く設備投資額は、18年度に製造業が5.8%増、非製造業が4.4%増。全産業では5.1%の増加だった。

ただ製造業の悪化を非製造業が支える形は、そう長くは続かない。製造業の不振が長引けば、それが非製造業にも影響を及ぼすからである。こうした視点から3か月後の先行き予想をみると、大企業・製造業はプラス7で横ばい。非製造業はプラス17で、6ポイントの低下となっている。製造業がもっと改善しないと、非製造業の業況も悪化する心配は否定できない。

       ≪1日の日経平均 = 上げ +454.05円≫

       ≪2日の日経平均は? 予想 = 上げ


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トランプ大統領の 泣きどころ (上)
2019-07-03-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 関税引き上げ第4弾はムリ? = 大阪で開いた米中首脳会談。両国は中断していた貿易交渉を再開し、アメリカ側は中国に対する制裁関税第4弾を当面は発動しないことを決めた。最悪の事態が回避されたため市場は一安心、株価も大きく上げている。しかし今後の見通しは全く不透明。いつまた関税引き上げ競争が再燃するか、予断は許さない状況だ。

首脳会談の詳細な内容は明らかにされていないが、どうもトランプ大統領が一方的に発言し、習主席の口は重かったようだ。たとえばトランプ氏は「ファーウェイに対するアメリカ製部品の供給を容認する」と述べたといわれるが、これに対する習氏の反応は全く伝わってこなかった。全体として、トランプ氏の姿勢がやや柔らかくなった感じさえする。

なぜだろう。その答えを見つけるカギは、アメリカ国内にあるようだ。トランプ大統領は、中国に対する圧力を強めるため、中国からの輸入品すべてに最大25%の関税をかける第4弾の制裁措置を準備するよう指示していた。ところがUSTR(通商代表部)が実施した公聴会では、反対論が続出。抵抗は予想以上に強いことが判明した。

たとえばスマホやノート・パソコン、衣料品や玩具の販売業界。いずれも中国以外の輸入先は見つからないし、値上げをすれば売れ行きが激減すると猛反対。また家電メーカーで組織するCTA(民生技術協会)や中小企業の団体なども、第4弾の関税引き上げは死活の問題だと必死で訴えている。これらの業界が来年秋の大統領選挙で不支持に回ったら。トランプ大統領が心配しないはずはない。

                               (続きは明日)

       ≪2日の日経平均 = 上げ +24.30円≫

       ≪3日の日経平均は? 予想 = 下げ


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トランプ大統領の 泣きどころ (下)
2019-07-04-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ トランプvs習のハラの読み合い = 制裁関税第4弾には、家電や衣料品などの消費財が多く含まれる。したがって、これらの販売価格が値上がりすると、個人消費にブレーキがかかるかもしれない。また貿易戦争の激化を嫌気して株価が下がると、景気は悪くなる。さらに物価が上昇すれば、FRBが金利の引き下げに踏み切れない。大統領選挙の前に景気が悪化することは、絶対に避けねばならない。トランプ大統領はこう考えて、第4弾の発動を思いとどまったのではないか。

要するに“選挙第一”。選挙前に有権者を敵に回すような政策は、とらない方が賢明だ。しかしアメリカ国内には対中強硬派も少なくないから、中国に対して弱みをみせるわけにはいかない。そこで中国との貿易交渉は、とりあえず継続しておく。いつでも第4弾は発動できるぞと脅かしながら、ときには甘い提案も小出しにして交渉を長引かせる。

こうして来秋の大統領選挙で再選を果たせば、こっちのもの。あとは何の心配もなく、やりたいことがやれる。大胆にトランプ大統領のハラのうちを探れば、こういうことになるのではないか。そして重要なのは、おそらく習近平主席もそのことに気付いているということ。その結果、交渉を急がない姿勢を公然と見せているのだろう。

仮に大統領選挙でトランプ氏が負ければ、民主党から大統領が選ばれる。民主党は中国の人権問題にはうるさいが、貿易戦争は仕掛けてこない。だから現在の貿易交渉は続けるが、急ぐことはない。こちらも甘い提案を小出しにして、会議を長引かせる。もしトランプ氏が再選されたら、そこから真剣勝負が始まる。それまでに中国経済の強化に全力を挙げる。習氏のハラは、こうではないか。

       ≪3日の日経平均 = 下げ -116.11円≫

       ≪4日の日経平均は? 予想 = 上げ


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新たなる貿易戦争? : 日本vs韓国 (上) 
2019-07-05-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 半導体材料を4日から輸出停止 = 政府は1日、半導体の製造に不可欠なフッ化水素など3品目について、韓国向けの輸出を4日から規制すると発表した。これらの品目は軍事目的に転用される恐れがあることから、もともとは外為法によって政府の承認が必要と決められている。ただアメリカ、フランスなど友好的な27か国に対しては、この規定を適用していない。韓国もその27か国に含まれていたが、今回はその優遇措置から外すと通告した。

経済産業省はこの3品目について、韓国向けの輸出申請が出ても当面は認めない方針。つまり事実上の禁輸となる。3品目は、半導体の洗浄に使うフッ化水素、スマホのディスプレー原料のフッ化ポリイミド、半導体の基盤に塗る感光剤のレジスト。これらは日本企業が世界生産の7-9割を占めており、他国からの輸入は困難だとみられている。

したがって韓国のサムスンなど電子機器メーカーに及ぼす影響は、きわめて大きい。ただ韓国メーカーの生産が落ちると、これらの部品を輸入している日本の電子機器メーカーにも、悪影響が出てくる。にもかかわらず日本政府が禁輸に踏み切ったのは、慰安婦問題に続いて、元徴用工の訴訟問題が燃え広がってきたからだ。

とりわけ元徴用工の訴訟問題では、日本政府が解決に向けての話し合いを要求してきたが、韓国政府は応じない。その結果「韓国政府に対する信頼性が低下したため、禁輸に踏み切った」というのが、政府の説明だ。韓国政府は「WTO(世界貿易機関)へ提訴する」と激しく非難しており、日本製品の輸入規制を実施する可能性も大きい。そうなれば、日韓貿易戦争が勃発することになる。

                                (続きは明日)

       ≪4日の日経平均 = 上げ +64.29円≫

       ≪5日の日経平均は? 予想 = 上げ


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新たなる貿易戦争? : 日本vs韓国 (下)
2019-07-06-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 賢明とは言えないやり方 = 政府高官は3品目の禁輸について「慰安婦や元徴用工問題に対する報復ではない」と説明した。だが、わざわざ「報復ではない」と強調したことで、人々の脳裏には“報復”の2文字がこびりついてしまった。こんな言い訳はせずに、あくまで「韓国政府を元徴用工問題を話し合う場に引き出すため」と、きっぱり言い切るべきだったろう。その方が多くの人々の理解を得やすかったに違いない。

この姿勢を貫けば、1日に発表して4日には禁輸するといったトランプさんも驚くやり方は回避できた。たとえば韓国政府に元徴用工問題の話し合いに応じることを求め、「1か月たっても応じなければ禁輸に踏み切る」と宣言すればよかった。発表即禁輸だと、報復とか脅しの感じが強い。1か月の猶予を与えれば、人々の受け取り方もずいぶん違う。

もう1つは、国内外に向けた説明の仕方。たとえば安倍首相は「国と国との信頼関係の上に行ってきた措置を見直した」と、述べている。こういう言い方が、間違っているわけでは決してない。しかし、これだと韓国民全体の信頼が落ちたと聞こえないこともない。日本政府が「信頼できない」と言っているのは、韓国というより文在寅政権に対してであることを、もっと明確にすべきだった。

文在寅大統領は、かつて韓国政府が「元徴用工の問題は韓国政府が責任を持って処理する」と決めた際、その方針を政府に進言した特別委員会のメンバーだった。それが大統領になったら、態度を豹変。こうした事実を、もっと韓国民に知ってもらう努力もしたらいい。トランプさんも驚く電光石火の禁輸発表だったが、安倍さんにはもう少し“狡猾さ”があってもよかった。

       ≪5日の日経平均 = 上げ +43.93円≫

       【今週の日経平均予想 = 5勝0敗】    


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今週のポイント 
2019-07-08-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ ダウは史上最高値を更新 = アメリカは先週4日が独立記念日。ダウ平均株価はその前日の3日、終り値が2万6966ドルに達し、9か月ぶりに史上最高値を更新した。米中貿易交渉の再開とFRBによる利下げ期待が、株価を押し上げた。この日はSP500とナスダックの株価も、そろって最高値を更新している。ところが休日明けの5日、朝方に6月の雇用統計が発表されると、株価は反落した。

雇用統計の内容は、非農業雇用者の増加数が22万4000人。予想を大きく上回る結果だった。景気がいいことを示す経済指標が発表されたのに、株価が下がる。FRBによる利下げが遠のくのではないかと、投資家が心配したからだ。カネ余りの金融相場ではもう慣れっこになった、一種の矛盾である。ダウ平均は週間322ドルの値上がり。

日経平均も先週は470円の値上がり。米中貿易交渉の再開は好材料だが、アメリカの利下げムードは円高につながるため悪材料。それにしても東京市場の株価は戻りが鈍い。ダウ平均が年初来3600ドル上げたのに対し、日経平均は1700円しか上昇していない。その原因は、もっと追究されていい。今週はダウが2万7000ドルに載せるかどうかがポイント。

今週は8日に、5月の国際収支、機械受注、6月の景気ウォッチャー調査。9日に、5月の毎月勤労統計。10日に、6月の企業物価。11日に、5月の第3次産業活動指数。アメリカでは11日に、6月の消費者物価。12日に、6月の生産者物価。また中国が10日に、6月の消費者物価と生産者物価。12日に、6月の貿易統計を発表する。

       ≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ


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分水嶺に立った 景気 / アメリカ (上)
2019-07-09-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 7月で史上最長の景気拡大を記録 = アメリカの景気は、リーマン不況が底入れした09年7月から拡大を続けている。したがって、この7月で121か月目。91-01年に作った120か月の過去最長記録を破ることは確実になった。この間にダウ平均株価は約3倍に上昇、雇用情勢は劇的に改善して失業率は10%から3.6%にまで低下している。しかし米中貿易戦争の影響もあって、最近の景気には注意信号も。まだ拡大を続けるのか、それとも後退に向かうのか。分岐点にさしかかっている。

今回の景気拡大の特徴は、低成長という事実。たとえば91-01年のときは、年平均の成長率が3.6%だった。それが今回は、これまでの平均が2.3%でしかない。一部の経済学者は、この低成長率が景気を長期にわたって拡大させたと主張している。つまり景気の急ピッチな上昇がなく、その反動もなかったというわけだ。この論法は、いまの日本経済にも当てはまるかもしれない。                                                                                            

しかし10年もの拡大が続くと、さすがに疲れがみえてくる。たとえば工業生産指数は、ことしになってから前年比がマイナスになりがち。小売り売上高も前年比の伸びが縮小してきた。ISM(サプライ・マネジメント協会)の製造業景況指数も低下を続け、6月には51.7と、好不況を分ける50に急接近している。そして4-6月期の企業決算は、確実に減益となる。

これまで“一人勝ち”してきたアメリカの景気は、史上最長の拡大記録を作ったところでピークを迎えるのか。それとも、もうひとヤマ登るのか。もちろん米中貿易戦争が終結すれば、景気には活が入るだろう。だが半面、FRBによる政策金利の引き下げは遠のくかもしれない。確かなことは、アメリカの景気が微妙な段階にきているという事実である。

                                (続きは明日)

       ≪8日の日経平均 = 下げ -212.03円≫

       ≪9日の日経平均は? 予想 = 上げ


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分水嶺に立った 景気 / アメリカ (下)
2019-07-10-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 要注意なのは信用度の低い社債の溶解 = 分水嶺に達したアメリカ経済にあって、なお光り輝いているのが株価と雇用。この輝きのために、景気の判断は強くなりがちだ。このうちダウ平均は先週、史上最高値を9か月ぶりに更新した。米中貿易交渉の再開とFRBによる利下げ期待が原動力だが、基本的にはカネ余りがもたらす現象だろう。結局はリスクが下がれば、カネを株式市場に注ぎ込むしかない。

もう1つの雇用には、少々ナゾが多い。工業生産の水準が下がり気味なのに、6月の雇用統計では製造業や建設業の雇用者数が増えている。5月に減少したことの反動もあるだろうが、全体として人手不足感が解消しないのはなぜなのか。アメリカでも「団塊の世代が定年を迎えつつあるからだ」という説明もあるが、それだけではどうも納得できない。

株価と雇用が絶好調なことから、アメリカの景気はまだ拡大を続けるという見方も強い。その可能性も小さくはないが、景気のピークが近づいていることも確かだろう。ただ拡大が緩やかだったために、次の後退は短くて浅いという観測も強い。しかし景気が下降を始めた場合、今回は特に注意すべきことがある。

それは長年のカネ余りで、信用度の低い企業の社債が急増していること。5%程度の金利につられて、大量の資金が集まっている。景気が好調なうちはいいが、いったん景気が下降に向かうと倒産が続出。これらの社債で組成したレバレッジ・ローン債などは紙くずに。規模の違いはあるかもしれないが、あのリーマン・ショック時と同じ金融不安を惹き起こす危険が、日に日に増大していることは確かである。

       ≪9日の日経平均 = 上げ +30.80円≫

       ≪10日の日経平均は? 予想 = 下げ


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割れた 景気判断 : 日銀と街角
2019-07-11-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日銀は「拡大や回復」、街角は「悪化」 = 日銀は8日、7月の地域経済報告を発表した。全国9地域の景気動向についての判断を、すべて4月時点の判断のまま修正しなかったことが、今回の報告の特徴。その内容は、景気は拡大中あるいは回復中というもので、米中貿易戦争や消費増税などの不安要因はあるものの、全体としては楽観的な見方となっている。

日銀は3か月に1度、支店長会議を開いて各地域の経済情勢を報告させている。その結果をまとめたものが、地域経済報告だ。今回の内容をみると、東海地域が「拡大」で、北陸・関東甲信越・近畿・中国・九州沖縄が「緩やかに拡大」。また北海道・東北・四国が「緩やかな回復」という結論だった。

一方、内閣府は同じ8日、6月の景気ウオッチャー調査を発表した。それによると、全体の景気判断指数は44.0。前月に続いて低下しており、3年ぶりの低い水準に落ち込んだ。この調査はレストランの店長やタクシーの運転手など、景気に敏感な仕事についている人を対象に“体感”を聞いている。街角の景気指数とも呼ばれ、判断指数が50を切ると景気は悪化と認定される。

地域別にみると、最も判断指数が低かったのは甲信越地域で39.2と40を割り込んだ。次いで東北地域が40.7。高かったのは沖縄が49.0、北海道が47.9だが、いずれも50には達していない。こうして日銀と街角の景気判断は、完全に相違した。「景気は悪化」の結論を出すと、日銀はさらなる金融緩和を迫られる。それは困るというので、日銀の支店長は“忖度”したという見方もあるが、それはさすがにウガチすぎだろう。

       ≪10日の日経平均 = 下げ -31.67円≫

       ≪11日の日経平均は? 予想 = 上げ


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瀕死の 原子力発電 (上)
2019-07-12-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 新たに「未知の活断層」対策を追加 = 原子力規制委員会は原発の安全性をさらに高めるため、新たに「未知の活断層」対策を追加する方針。今月中にも正式決定し、各電力会社に通知する。これにより、いま稼働中の原発が停止を余儀なくされたり、安全審査に合格した原発の稼働が延期される可能性が出てきた。さらに原発の発電コストがいっそう上昇するなど、原発の将来性にも疑問を生じそうだ。

福島第1原発の事故を受けて、原子力規制委員会は12年の発足以来、原発の安全性を高めるため数々の対策を講じてきた。地震や津波に始まり、最近では火山やテロ対策。そしてまた地震に戻って、既知の活断層だけでなく、未知の活断層も対象とすることになったわけ。その背景には、最近数年間に全国で起きた地震データの集積がある。

東日本大震災の前、日本では54基の原発が稼働していた。それが事故や廃炉によって、現在では34基に減っている。しかも、そのうち規制委員会の安全審査に合格して、再稼働しているのはわずかに9基。このなかでは川内原発1-2号機と高浜原発3-4号機が、テロ対策のための工事が間に合わず、来年3月から10月にかけて次々と運転停止に追い込まれる見込み。

そのうえ「未知の活断層」対策が発動されると、停止を余儀なくされる原発はもっと増えるかもしれない。また、これまでの安全基準をクリアした女川原2号機や島根2号機などは、再審査となる可能性が高い。こうしてオリンピックのころになると、稼働している原発の数は片手で数えられる程度に減ってしまいそうだ。

                             (続きは明日)

       ≪11日の日経平均 =上げ +110.05円≫

       ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ


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瀕死の 原子力発電 (下)
2019-07-13-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ エネルギー計画は崩壊した = 津波対策では防潮堤のカサ上げ、テロ対策では原子炉から100㍍以上離れて監視・冷却が可能な施設を造らなければならない。この結果、13年時点では9000億円と想定されていた電力各社の安全対策費は、現在4兆8000億円にまで跳ね上がっている。当然、この費用は発電コストに加算され、電気料金に上乗せされる。つまり「発電コストがいちばん安いのは原子力」という通説は、覆されることになるわけだ。

政府は「原子力を将来にわたる基幹電源」と位置づけている。しかし現状から判断する限り、その可能性はゼロに等しい。また政府が基幹電源と位置付けている、もう1つの再生可能エネルギーも、強制買い取り制度が完全に裏目に出て、ほとんど増加していない。政府のエネルギー基本計画によると、30年には電力の20-22%を原子力で、22-24%を再生可能エネルギーで発電することになっている。だが、この計画は“絵に描いた餅”になってしまった。

原子力発電が減少し、再生可能エネルギー発電が伸びないとすると、あとは火力発電への依存を高めるしか方法がない。そうすると、石炭・原油・LNG(液化天然ガス)の輸入がさらに増大する。その結果は、輸入代金の支払いが増えて、景気にとってのマイナス要因が拡大するばかり。CO₂の排出も増え続け、地球温暖化防止に逆行せざるをえない。

日本経済にとっては、エネルギーの確保が最重要課題であることは言うまでもない。だが達成が不可能になったエネルギー計画はそのまま。折しもホルムズ海峡では緊張が高まっているが、もう何十年も言い続けられている「中東原油への依存度を下げる」ことなどなど、すっかり忘れられているようだ。責任官庁の経済産業省は、いったい何を考えているのだろうか。

       ≪12日の日経平均 = 上げ +42.37円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】   


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今週のポイント
2019-07-15-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ ダウ平均は2万7000ドル台を達成 = ダウ平均は先週410ドルの値上がり。とうとう2万7000ドルの大台乗せに成功した。パウエルFRB議長が「より緩和的な金融政策の必要性が高まっている」と、議会で証言したことが株価を押し上げた。この発言で、FRBが今月末の会議で利下げを決めることが確実に。市場では早くも利下げの幅と次の利下げ時期が、関心のマトになっている。

NY株は、まだ騰勢を持続するのだろうか。その行く手にみえる最大の障害物は、企業利益の縮小だろう。リフィニティブ社の調査によると、主要500社の4-6月期は0.4%の減益になる見通し。株価がこの障害物を乗り越えるためには、どうしても次の利下げが必要だ。こうして市場とFRBの心理的な駆け引きが、再び始まることになる。

東京市場は出来高も薄く、冴えない。日経平均は先週60円の値下がりだった。アメリカの金利が下がると、円は上がりやすい。中国経済の不調で、輸出が伸び悩み。原油価格も上昇してきた。そして韓国との不協和音。さらに消費増税の期限も近づいてきた。ただ参院選については、与党の勝利を織り込み済み。こうしたなかで外国人投資家も国内の個人投資家も、早めの夏休みに入ったような状態だ。

今週は17日に、6月の訪日外国人客数。18日に、6月の貿易統計。19日に、6月の消費者物価と5月の全産業活動指数。アメリカでは15日に、7月のNY連銀・製造業景況指数。16日に、6月の小売り売上高と工業生産、7月のNAHB住宅市場指数。17日に、6月の住宅着工戸数。18日に、6月のカンファレンス・ボード景気先行指数。19日に、7月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が15日に、4-6月期のGDP速報、6月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。なお21日は、参院選の投開票日。

       ≪16日の日経平均は? 予想 = 下げ


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置き去りにされた 日本株
2019-07-17-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ なぜ株価の戻りが遅いのか = ニューヨーク市場ではダウ平均株価が2万7000ドル台に載せ、連日のように史上最高値を更新している。イギリス、フランス、ドイツの株価も、7月に入って年初来高値を更新した。置いて行かれたのが日本株。昨年末からの株価上昇率をみると、アメリカが15.6%、ヨーロッパが16.3%の値上がり。成長率の鈍化が心配される中国でさえ20.5%の上昇。こうしたなかで、日経平均株価の上昇率は8.4%にとどまっている。

なぜだろう。よく言われるのは、中国との関係が深いこと。米中貿易戦争もあって苦境に陥った中国経済の影響を、いちばん受けているのが日本企業だという現実。またFRBが利下げに進むと、円相場が上昇しやすい構造。さらに参院選後に本格化する日米貿易交渉。10月に予定される消費増税。こうしたなかで日本の企業業績が悪化しつつあることを、外国人投資家は特に警戒している。

もう少し基本的な問題を指摘する人も多い。たとえば人口が減少し、少子・高齢化の進行も速い。そのうえ景気が下降局面に入っても、日本の場合は財政・金融面からの対策を講じる余地がきわめて限られている。潜在成長力が落ちているうえに、有事の場合の防衛力も十分でないというわけだ。

東証の発表によると、18年度中に外国人投資家は5兆6000億円を売り越した。特に年度の後半にその勢いを強め、それが最近まで続いている。米中貿易戦争やアメリカの金融政策は、成り行きを見守るしかない。しかし世界不況の可能性が深まっている現在、日本としては景気対策をどうするのか。政府・日銀が“座して天命を待つ”姿勢だと、株価は上がらない。

       ≪16日の日経平均 = 下げ -150.65円≫

       ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ


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爆弾を抱え込んだ 中国経済 (上)
2019-07-18-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 自動車と不動産が苦境に = 中国経済の成長鈍化が止まらない。国家統計局が15日発表した4-6月期のGDP実質成長率は、前期より0.2ポイント低下して6.2%となった。リーマン・ショック直後の不況時を下回る水準で、中国が四半期ごとのGDPを公表するようになった1992年以来の最低。習政権が目標としている6.0-6.5%の範囲内には収まっているが、これ以上減速すると「20年のGDPを10年の2倍にする」という公約は実現が難しくなる。

同時に発表された経済指標も、総じてよくない。鉱工業生産は1-6月間で前年比6.0%の増加。1-3月間の6.5%から減退した。特に自動車と半導体の減産が大きい。設備・インフラ・不動産投資を合計した固定資産投資は、1-6月間で5.8%の増加。これも1-3月間の6.3%増から、はっきり減少している。小売り売上高だけは1-6月間が8.4%の増加で、1-3月間の8.3%増をやや上回った。

輸出も1-6月間では1.3%の減少。1-3月間の1.4%増加からマイナスに転じている。ただ貿易統計をみると、少し奇妙な動きに気付く。貿易戦争の影響で1-6月間の対アメリカ輸出は8.1%の減少だった。しかし全体の輸出は0.1%増えている。これはベトナムなど東南アジア向けの輸出が急増したため。アメリカに向けた迂回輸出の疑いも、否定はできなそうだ。

新車の販売台数は18年に前年比2.8%の減少となったが、ことし1-3月期も11%の減少だった。また不動産もバブルがはじけ、北京や上海の住宅価格は4-9%下落している。100社を超す自動車メーカーの淘汰が始まっており、不動産業者の倒産も少なくない。自動車と不動産の立ち直りには時間がかかるから、成長率の鈍化はまだ続きそうだ。政府は対策に懸命だが、やり方を間違うと抱え込んだ“過剰債務”という爆弾が爆発しかねない。

                                (続きは明日)

       ≪17日の日経平均 = 下げ -66.07円≫

       ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ


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爆弾を抱え込んだ 中国経済 (下)
2019-07-19-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ 「危ない銀行のリスト」が出回る = 中国社会科学院の調査によると、中国の債務総額はことし3月末でGDPの248.8%にのぼった。この比率から逆算してみると、実額は約225兆元(3500兆円)に達する。内訳は約6割が企業による債務、あと政府と家計が2割ずつを占めている。いずれの部門でも過去最大の水準、しかもなお急膨張中だ。金融機関の貸出額は、ことし1-6月だけで10兆元も増加した。

債務が最も大きい企業部門のGDP比率は156.9だった。そのうちの68%を国有企業が占めている。また上場企業の総負債額は、ことし3月末時点で38兆元となっている。ところが経済成長の鈍化で、最近はこの債務が企業経営にとっては重荷となってきた。社債の債務不履行は18年に1200億元、ことし1-3月にも600億元が発生している。

中国の景気対策は、ほとんどが地方政府の借金によって賄われている。このため地方政府の債務総額も、合計40兆元を超えたという見方が強い。また家計の債務は、ほとんどが住宅ローン。最近の住宅価格の値下がりで負担感が増し、個人消費を圧迫し始めたとみられている。

問題なのは、こうした過剰債務の不良債権化だ。金融機関の不良債権は18年末で2兆元。特に中小銀行の経営が危ぶまれている。内モンゴル自治区の包商銀行が倒産したこともあって、一部の地域では「危ない銀行のリスト」が出回り始めたという。人民銀行は中小銀行向けに3000億元の融資ワクを設けるなど対策に乗り出しているが、銀行の連鎖倒産が起きると金融不安が表面化する。政府が景気対策を進めれば、過剰債務が増えてしまう。と言って成長率が6%を下回ると、不良債権が激増し、金融不安という爆弾が暴発しかねない。

       ≪18日の日経平均 = 下げ -422.94円≫

       ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ


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とうとう出た 手放し運転自動車
2019-07-20-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 事故の責任はだれが負うのか = 日産自動車は16日、高級セダン「スカイライン」の新型モデルを9月に発売すると発表した。このうちのハイブリッド車は「運転者が直ちにハンドルを操作できる状態なら」という条件付きだが、高速道路での手放し運転が可能だという。価格は547万ー632万円。他のメーカーも、同様の手放し運転車を次々に発売するとみられている。

手放し運転車の走行には、道路交通法など関連する法律の改正が必要だ。このため政府はいち早く、先の通常国会で改正案を成立させている。ところが、この改正案が何とも判りにくい。ふつうの法律は厳格な言葉が並んでいて難解だが、この改正法は表現が曖昧で判りにくい。高速道路を走行中に、運転者は「直ちにハンドルを操作できる状態にあること」が、条件だとは書いてある。

しかし具体的な事例として「携帯電話の送受信やメールの発信、スマホの操作や読書、テレビの視聴」はしてもいい。だが「睡眠や飲酒」はダメだという。ここで大きな疑問が発生する。スマホをいじっていたり、読書をしていて「直ちにハンドルを操作できる」だろうか。何秒かでもハンドル操作が遅れれば、それだけ事故の確率は高くなる。

車線変更した車が前方に割り込んできて衝突。こちらの車では、運転者がスマホでゲームに熱中していた。でも法律違反はしていない。いったい事故の責任は、割り込んだ車にあるのか。それとも手放し運転をしていたドライバーにあるのか。あるいは事故を避けられなかった車のメーカーにあるのか。首をかしげない人は、いないだろう。

       ≪19日の日経平均 = 上げ +420.75円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝0敗】   


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今週のポイント
2019-07-22-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 市場の関心は企業業績に = ニューヨーク市場の株価は、浮揚力を失ったようにみえる。週初には上げて史上最高値を更新したものの、あとは売られた。ダウ平均は週間178ドルの値下がり。FRBによる利下げを材料に最高値は更新したが、始まった4-6月期の決算発表が想定されたよりも悪い。利下げは織り込んでしまったために、こんどは企業業績の動向に心配が集中し始めたようだ。

日経平均も先週は219円の値下がり。木曜日には423円と4か月ぶりの大幅安となったが、金曜日には反発してその下げをほぼ取り戻した。大きく下げると割安感が出て、下値を拾う動きが活発になる。ただ日本株の場合は、アメリカの利下げで円高傾向が強まることへの警戒感から抜け出せない。

イランを巡る情勢が、ますます緊迫化してきた。この問題はニューヨーク市場にはあまり響かないが、東京市場は敏感にならざるをえない。また日本でも4-6月期の企業決算発表が始まるが、こちらの見通しも良好ではない。参院選の結果が株価に影響する可能性は小さいが、市場は今週も様子見を続けるのではないか。

今週は25日に、6月の企業向けサービス価格。26日に、東京都区部の消費者物価。アメリカでは23日に、5月のFHFA住宅価格、6月の中古住宅販売。24日に、6月の新築住宅販売。26日に、4-6月期のGDP速報が発表される。なお23日には、イギリス保守党の党首選挙の結果が公表される予定。

       ≪22日の日経平均は? 予想 = 下げ


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減益が増える 4-6月期決算
2019-07-23-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 日米ともに株価の重しに = 今週からはニューヨークでも東京でも、企業の4-6月期決算発表が本格化する。調査会社やアナリストの予想を総合すると、減益となる企業の数が想定以上に多くなりそうだ。世界経済の減速を反映したもので、市場関係者は決算発表が進むにつれて減益傾向が強まることを警戒している。アメリカでは来週の利下げが確実視されているが、株価にとってはこの減益傾向の方が大きな重しになってきた。

アメリカの調査会社リフィニティブの予想によると、4-6月期の主要500社の純利益は前年比3%の減益になる見込み。1-3月期の1%減益に次いで、2四半期連続の減益になる。理由は米中貿易戦争、世界経済の鈍化傾向、それにハイテク需要の減少など。だが決算発表は、まだ始まったばかり。これから発表が進むにつれて、減益幅は拡大する可能性があるという。

日本の企業業績も、同じような傾向にある。少し前までは、4-6月期の純利益は前年並みという予想が大勢を占めていた。ところが中国の成長鈍化が長引き、2月決算の内容が予想を下回ったことなどから、4-6月期の予想も悪化してきている。なかには2ケタの減益になるという見方も現れた。

日本の場合は、アメリカよりも中国経済の影響を受けやすい。また円高に対する警戒感も強まっている。さらにイランを巡る緊張の高まり。10月からの消費増税。そして財政・金融面からの景気対策に、手詰まり感が強いこと。こうした独自の要因も重なって、株価の戻りが極端に遅くなっている。今週から始まる決算発表では、個々の企業だけでなく、全体の利益率を注視することが重要だ。

       ≪22日の日経平均 = 下げ -50.20円≫

       ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ


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不気味な 日米貿易交渉 (上)
2019-07-24-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ 参院選の結果を喜べない経済界 = 参院選では自民・公明の与党が圧勝。しかし憲法改正の国会発議ができる数には届かなかった。政治の安定性が保たれる一方で、改憲に伴うゴタゴタは回避された。経済界にとっては、最も望ましい結果に終わったと言えるだろう。だが市場には“ご祝儀相場”の雰囲気はなく、月曜日の日経平均は下落した。選挙後に出現するはずの難題に、身構えざるをえなかったからである。

中国経済の成長鈍化によって、世界経済全体にも暗雲が広がってきた。日本でも輸出が減り、生産が落ち込んできている。そこへ消費税の引き上げ。景気の先行きは大丈夫なのか。そんな心配が強まっているところに、選挙が終わると日米貿易交渉が表舞台に登場する。いよいよ、という感じだ。

本格的な日米間の交渉は、参院選が終わるまで棚上げされてきた。トランプ大統領が、参院選で「与党の不利にならない」よう配慮してくれたからだ。裏を返せば、これからは「与党の不利になるような」要求を突きつけるぞ、というようにも受け取れる。これまでの下交渉で、アメリカ側は自動車と農畜産物の輸入増加、それに為替条項の導入を強く要求してきた。

このうち農畜産物の輸入増加について、日本側は「TPP(環太平洋経済連携協定)で決めた水準が限度」と回答。アメリカ側は納得していない。選挙も終わったことだから「もっと譲歩せよ」というのが、トランプ氏の言い分だろう。こんどの選挙で自民党は東北地方の1人区で敗北したが、有権者たちが抱いたこの辺への疑念と関係があるのかもしれない。

                              (続きは明日)

       ≪23日の日経平均 = 上げ +204.09円≫

       ≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ


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不気味な 日米貿易交渉 (下)
2019-07-25-Thu  CATEGORY: 政治・経済
◇ 安保問題がからむと弱い日本 = これまでの交渉でアメリカ側がちらつかせている伝家の宝刀は、日本製自動車への高関税あるいは数量規制。日本の対米輸出は完成車と部品を合わせて、18年に5兆5000億円にのぼった。本当に規制されたら、日本のメーカーは壊滅状態に陥るだろう。このため日本政府もアメリカ産農畜産物の輸入増加や防衛装備の大量買い付けなどを提案、懸命に防戦している。

そんな折に、ジョン・ボルトン大統領補佐官がひょっこり来日した。国連大使を務めたこともある外交官の出身で、トランプ政権内でも群を抜く対外強硬派だ。河野外相や岩屋防衛相と会談、北朝鮮問題やトランプ大統領が言い出したホルムズ海峡を守る有志連合について話し合ったとみられている。したがってボルトン氏の来日は、表向き貿易交渉とは関係がない。

だが有志連合の問題は、日本にとって非常に厳しい。自衛隊の派遣は国内で議論を巻き起こすし、派遣すればイランとの関係が悪化しかねない。しかし日本が輸入する原油の64%が、ホルムズ海峡を通過していることは事実。それをアメリカに守ってもらうことになれば、何らかの対価を払わざるをえない。

その分が貿易交渉に跳ね返る可能性は、決して小さくはないだろう。ボルトン氏がそこまで言及したとは思えないが、結果的にそこへ落とし込まれることは十分にありうる。経済界はそうなることを憂慮しており、農家も自動車メーカーも息を凝らして見守っている。だから株価も上がりにくい。

       ≪24日の日経平均 = 上げ +88.69円≫

       ≪25日の日経平均は? 予想 = 下げ


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“混迷病”に憑りつかれた イギリス
2019-07-26-Fri  CATEGORY: 政治・経済
◇ ジョンソン新首相の登場でさらに重篤化 = イギリスの新首相に、ボリス・ジョンソン氏が就任した。メイ前首相が、EUとの間で合意した離脱協定案の議会承認を得られず辞任。あとを受けて保守党の党首選挙に圧勝、直ちに議会で首相に選出された。EU離脱の強硬派として知られ、首相就任直後の演説でも「予定された10月末の離脱を目指す」と言明している。

離脱協定案について、新首相は「EUとの間で再交渉はする」とも述べている。しかしEU側は、再交渉には応じない方針。もし再交渉がなく、協定案が修正できなければ「10月末に離脱」というのが、ジョンソン新首相の考え方だ。このため、一般には「10月末の合意なき離脱」の可能性が強まったと考えられている。

ところが問題は、そう簡単には割り切れないようだ。というのも野党の労働党は、ほとんどが離脱反対。与党内にも反対派がいるから、もし下院で投票ということになると離脱は拒否される公算が大きい。また野党がジョンソン首相の不信任案を提出した場合も、成立する可能性が高いとみられている。

こうした事態を防ぐため、ジョンソン首相は10月末まで議会を招集しないという奇襲作戦をとる見込み。これに対して野党側は、早くも休会の阻止法案を提出して可決された。どうにも事態は相変わらず複雑、混沌としている。収拾がつかなくなって、最後はまた国民投票という観測も出ているが、こんど投票すれば残留派が勝つという予想も。イギリスの“混迷病”は、むしろ進行したようにも思われる。

       ≪25日の日経平均 = 上げ +46.98円≫

       ≪26日の日経平均は? 予想 = 下げ


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“忖度”の匂いがする 月例報告
2019-07-27-Sat  CATEGORY: 政治・経済
◇ 「緩やかな回復」と言うしかない? = 政府は23日に開いた関係閣僚会議で、7月の月例経済報告を了承して公表した。いちばん注目される景気の現状については「輸出を中心に弱さが続いているものの、緩やかに回復している」と表現。これまでの判断を据え置いている。このため新聞各紙も、この記事をそれほど大きくは扱わなかった。しかし月例報告をよく読んでみると、なんだか誤魔化されているような気がしてならない。

まず生産の動向について、報告は「横ばいとなっているものの、一部に弱さが続いている」と判断した。従来の「弱含んでいる」に比べてどう違うのかよく判らないが、これで1年7か月ぶりの上方修正になったと説明している。この上方修正は、全体の景気判断を「緩やかな回復」とするための重要な根拠となっているらしい。

ところが、企業の業況判断に関する箇所では「製造業を中心に慎重さが増している」と記述している。製造業が慎重さを増しているのに、生産が上方修正されるとは。ちょっと理解に苦しむ。また生産を上方修正した根拠として、報告は「5月の生産指数は前月比0.5%増」の数字を挙げた。しかし経産省が発表した5月の生産指数は前月比2.1%の減少。プラス0.5%という数字は、どこを探しても見当たらない。

月例報告は、景気動向に関する政府の公式見解だ。消費増税を目前に控えて、報告で「景気は下降」とは言えない。そんな思惑が、この月例報告からは感じ取れる。判断を「緩やかな回復」のまま据え置くために、悪ヂエを働かしたのではないか。そこで“改竄”があったとは思えないが、少なくとも“忖度”の匂いは漂ってくる。

       ≪26日の日経平均 = 下げ -98.40円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】   


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今週のポイント
2019-07-29-Mon  CATEGORY: 政治・経済
◇ 半導体の復活が新たな助っ人 = ダウ平均は先週38ドルの値上がり。かろうじて2万7000ドル台を守り通した。今週31日の利下げが確実視されること、米中貿易協議が再開されたこと。加えて始まったばかりの決算発表で、予想を上回る好業績の企業が現われたことが材料になった。この新しい助っ人は、市況の回復を反映した半導体関連の銘柄に多い。

一方、週末に発表された4-6月期の実質成長率は2.1%どまり。前期より1%減速した。米中貿易戦争の影響で、輸出と企業の設備投資が減退した。この傾向は、米中交渉が進展しない限り続くことになるだろう。ニューヨーク市場としては、FRBによる次の利下げと半導体の本格的な回復に期待するしかない。

日経平均は先週191円の値上がり。アメリカの利下げにもかかわらず、円相場が1円ほど円安に傾いたことが、買い材料となったようだ。しかし相変わらずの手掛かり難。参院選も終わって、いよいよ消費増税が近づいてきたことが不安材料に。ニューヨークと違って、4-6月期の決算にも予想外の好結果が現われる兆候はない。

今週は29日に、6月の商業動態統計。30日に、6月の労働力調査と鉱工業生産。31日に、6月の住宅着工戸数。1日に、7月の新車販売台数。アメリカでは30日に、6月の中古住宅販売、7月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。1日に、7月のISM製造業景況指数。2日に、7月の雇用統計と6月の貿易統計。またEUが31日に、4-6月期のGDP速報。中国が31日に、7月の製造業と非製造業のPMIを発表する。なおFRBは31日に、利下げを決定する予定。

       ≪29日の日経平均は? 予想 = 上げ


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置き去りになる 日本 : 金融緩和
2019-07-30-Tue  CATEGORY: 政治・経済
◇ 景気の悪化を認めない政府・日銀 = 世界経済は再び金融緩和の波に洗われることになった。アメリカの中央銀行であるFRBはあす31日、政策金利の引き下げを発表する予定。ヨーロッパの中央銀行であるECBも、9月には緩和政策に踏み切る方針。こうしたなかで、日銀だけはずっと静観の姿勢を貫こうとしている。日本は世界の金融緩和という流れから、取り残されそうだ。

FRBのパウエル議長は30-31日に開く政策決定会合後に記者会見し、10年半ぶりの政策金利引き下げを発表する見込み。金利は現行の2.5%から、おそらくは2.25%に下がるものと思われる。利下げに踏み切る理由として、パウエル議長は「景気の現状は必ずしも悪くはないが、米中貿易戦争の影響などで悪化の可能性がある」と、予防的緩和の意義を強調するに違いない。

これに先立ちECBも25日の理事会で、金融政策のカジを緩和へ切り替えることを決めた。次回9月の理事会で、政策金利の引き下げと量的な緩和を打ち出す公算が大きいと観測されている。こちらもアメリカと同様、景気の下降を未然に防ぐための措置。特にアメリカの利下げで「ユーロの対ドル相場が上昇しないようにするための政策」だと説明するはずだ。

ところが日銀は、政策の変更など全く考えていない。もうマイナス金利で、下げる余地がないのか。いや、ECBも政策金利はゼロ、市中銀行から預かる場合の預金金利はマイナス0.4%で、日本と変わらない。日銀がFRBやECBと違う点は、ただ1つ。それは消費増税を前にして「景気が心配」とは、口が裂けても言えないこと。景気に心配がなければ、金融緩和の必要はなくなる。

       ≪29日の日経平均 = 下げ -41.35円≫

       ≪30日の日経平均は? 予想 = 上げ


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“半導体”の 不安定な回復
2019-07-31-Wed  CATEGORY: 政治・経済
◇ ニューヨーク市場の明るい話題 = FRBによる利下げは織り込んでしまい、次なる手がかりを探していた先週のニューヨーク株式市場。半導体市況の回復? という思わぬ材料が出現して、歓声をあげた。4-6月期の決算発表が進むなかで、たとえばテキサス・インスツルメントの売り上げは前年比9%の減少。事前の予測より大きく改善した。これまでに決算を発表したハイテク企業18社のうち、13社の売り上げが事前の予測を上回ったという。

半導体関連企業の業績は、3-4年を周期として大きく変動する。価格が上昇すると、世界中のメーカーが一斉に増産して在庫過剰に。市況が下がると、減産で業績が悪化する。このサイクルでみると、昨年からは下り坂。19年後半には底入れすると予測されていた。したがって、そろそろ業況が改善してもおかしくはない。

ところが、ことしは米中貿易戦争という不透明な要因が加わった。このため、たとえばWSTS(世界半導体市場統計)が6月に発表した予測では、19年の世界市場規模は4120億ドルで前年比12%の減少。SFMI(国際半導体製造装置材料協会)による製造装置の世界販売額は527億ドルで18%の減少となっていた。

それが一転して明るくなってきたのは、なぜだろう。米中間の貿易交渉が再開して、株価が上がるのなら理解できる。しかし交渉再開で、関連企業の売り上げが増えるとは考えられない。とするとサイクルの力が働いて、在庫が減ってきたのだろうか。その辺を見極めるのには、もう少し時間がかかりそうだ。東京市場でも、半導体関連銘柄は上昇し始めているのだが。

       ≪30日の日経平均 = 上げ +92.51円≫

       ≪31日の日経平均は? 予想 = 下げ


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